有事発生時の
情報網に不安
鹿児島県の奄美大島沖で発見された不審船と、海上保安庁の巡視船との間で激しい銃撃戦が起き、不審船は沈没、海上保安庁の保安官3名が負傷する事件が発生した。
99年に起きた不審船事件との共通点も多く、乗組員の着ていたライフジャケットにハングル文字があったことから、北朝鮮の工作船の可能性が高いとみられるが、真相は今後の捜査で明らかにされることを期待したい。
一方、今回の事件で有事の問題点の一端が明らかとなった。
不審船を最初に発見したのは、12月21日午後4時頃、自衛隊の哨戒機であったが、その段階で関係省庁へは連絡されず、21日夜再度哨戒機を飛ばし確認したうえで、第1報として、海上保安庁に連絡したのは、翌22日の午前1時20分であった。
実にこの間約9時間が経過していたが、有事にこれだけの時間が費やされるとは、信じがたい。
自衛隊は正式な通報とは別に、21日夕には官邸に報告したとしているが、海上保安庁の関係者は事前の連絡は一切なかったと否定しており、真相ははっきりしていない。
前回の不審船事件も連絡体制の不備から取り逃がしたが、その反省を踏まえ「共同対処マニュアル」を作成したにもかかわらず、なんら機能していないのは、怠慢と言わざるをえない。
2度と同様の事態が起きないよう、再発防止策を確立し、有事に即応できる体制を作り上げていただきたい。